鰻の蒲焼が浦和発祥ってほんと?

2013年3月25日

鰻の蒲焼が浦和発祥ってほんと?

じわじわと知名度を上げている浦和の名物・鰻。浦和駅西口のロータリーにはアンパンマンの作者やなせたかし氏がデザインしたご当地キャラクター“浦和うなこ”ちゃんの石像もあり、鰻による町おこしが進んでいます。

では、いつから浦和の鰻は名物になったのでしょうか?

 

■浦和の鰻、いつから有名になった?

1978年発行の『日本の伝統産業 物産編』という全国の名物を集約した書籍には、埼玉県の特産・嗜好品欄に“浦和の蒲焼”の文字があります。

それによると江戸・宝永年間(1704)に浦和宿付近で採れたウナギを中山道の旅人に提供し、好評を得たのがその始まりとされています。

また、県立文書館に収蔵されている『会田真言文書』という江戸時代後期の古文書には、浦和から毎年赤坂の紀州藩邸に鰻を献上していたことが記録されているだけでなく、弘化年間(1844~1848年)に描かれた『浦和宿絵図』にも“蒲焼商”の文字が記されています。

 

そして大正時代以降になると、関東大震災で東京から人が浦和へ疎開し、東京と浦和の往来が盛んになったことから、安くて美味しい蒲焼が農家の軒先で食べられると評判が広まり、東京近郊の人々の人気を集めたとか。

 

都市開発が盛んになった昭和30年代までは、浦和の小川や池や沼といった湿地帯でも沢山鰻がとれたため、農家では鰻採りのテボと呼ばれる捕獲用のカゴを鰻のいそうな場所に仕込んで捕獲し、鰻屋へ売っていたといいます。

 

■知られざる、文化人と浦和の鰻

明治21年創業の満寿屋には、有名な政治家や著名タレントのサインが飾ってありますが(2013年3月27日時点 店舗改装につき仮営業中)、映画や随筆集のなかにも“浦和の鰻”は数多く登場します。

 

(1)文豪 太宰治と浦和の鰻

浦和高校出身の編集者 野原一夫が明治から昭和にかけて活躍した小説家 太宰治と親交の記録を『太宰治回想』として出版していますが、その書籍の中にこのようなやりとりが登場します。

 

「浦和にも、名物はあるかね。」

太宰さんは蓬髪をかきあげた。

「名所はないけど、が名物です。大田窪という屋が町からすこし行ったところにあって、そこの鰻は、大串で有名なんです。東京からもいっぱい食べにきます。鰻はお嫌いですか。」
「嫌いということもないが、しかし、なにも、わざわざ。それより、どうかね。きみたちのうちの有志が、上野まで出向いて来ないかね。上野なら、浦和からすぐだろう。」

 

これは野原氏が大学時代、文化祭の出演要請のため太宰の家のあった三鷹を初めて訪問したときのやりとりの一節です。この時に出た“浦和の鰻を食べる”お誘いが実現したかは文中で言及されておらず、また1999年に野原氏がお亡くなりになっていることから不明のまま。

ですがこの頃から多くの人がわざわざ東京から浦和へ鰻を食べに来ていたことがわかるエピソードです。

 

(2)名監督 新藤兼人と浦和の鰻

映画監督、脚本家として知られる遠藤兼人は鰻好きとしても知られる人物。『新藤兼人の足跡』では以下の様なくだりがでてきます。

 

ある日わたしはうなぎをご馳走になるために浦和を訪れた。その店はうなぎを食べさせる名のとおった家で田園のなかの小川のほとりにあった。大皿に乗った大串のうなぎをみて、小食のわたしはもう腹にこたえてしまうほどだった

 

この浦和で食べた大串の鰻がひとつのヒントになったのでしょうか。脚本を担当した昭和38年公開の映画『爛(ただれ)』では、田宮二郎演じる自動車のセールスマンが「浦和に鰻でも食べに行こう」といって相手役の若尾文子を誘って連れ出すシーンが。

“浦和へ鰻を食べに行く”というのがひとつのレジャーとして定着していたことを伺い知ることができる貴重なワンシーンといえそうです。

 

 

いかがでしたか?

一説によると浦和が鰻の蒲焼の発祥だとする説もありますが、まだまだ詳細が不明な点も多くはっきりとしたことはわかっていません。

とはいえ江戸後期から今に至るまで、浦和の鰻が多くの人々に愛されてきたことは紛れもない事実です。

鰻というと静岡の名物として全国区になってしまっていますが、“鰻の浦和ここにあり”と再び広く知れわたるように伝統を育んでいきたいものですね。

 

 

参考:

新藤兼人の足跡4(岩波書店)

回想 太宰治(新潮社)

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